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民事信託は、委託者が受託者を信じて財産を託し、受託者が託された財産を運用して運用益を受益者に交付する制度です。主に高齢者の財産保護、障がい者の保護等に利用されています。
弊所では、下記書籍・DVDで弁護士の先生方向けに民事信託の概要と問題点、作成ノウハウを公開しています。従来の書籍が書式集であったのに対し、現実の作成経緯を踏まえて、委託者の意思の把握、受託者の選定と永続きするための方法などを解説し、多くの弁護士の方が、この書籍を参考にして民事信託を取り組んでおられます。
書籍
法律家のための遺言・遺留分実務のポイント 遺留分侵害額請求・遺言書作成・遺言能力・信託の活用、事業継承
DVD
分かっているつもりが怖い 遺言・遺留分・民事信託の実務注意点
【民事信託を利用しようという方へ】
高齢者の財産保護に民事信託を利用する場合
悪質な業者が、認知症気味の高齢者を狙って、アパート等の資産をだまし取る行為が横行していますが、民事信託を利用することで、高齢者の財産を保護できます。
そこで、親が認知症等で判断能力が衰えたとき、子供を受託者とし子供に財産を信託譲渡し、親を委託者兼受益者とする民事信託を利用することで高齢者の財産保護を図ることができます。例えば親が賃貸アパートを有しているとき、親が委託者として子に信託譲渡し、子が受益者としてアパート管理して収益を受益者である親に配分します。
信託譲渡であり受益者が元所有者である親ですから課税の問題は生ぜず、親も財産管理の煩わしさから解放され、家賃だけを収受できます。また親の認知症が進行して法律行為ができなくなっても、受託者がきちんと管理するので問題ありません。
民事信託は、主に、この高齢者の財産保護に利用されています。
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親なき後問題の解決に民事信託を利用する場合
子供の心身に障がいがあり、親が死亡したら一人では自活できないとき、民事信託を利用することで、親死亡後も、子供を経済的に支えることができます。例えば、親が障がいのない長女にアパートを信託譲渡し、アパートの管理を委ねます。親が生存中は親が第一次受益者となり、親死亡後は障がいのある子が第二次受益者となることで、生涯にわたって安定的に生活費を支え続けることができます。その子が死亡した時は、遺産は、福祉施設が承継するようにしたほうがいいでしょう。
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後継ぎ遺贈実現のため受益者連続信託を利用する場合
夫婦間に子供がいない場合、妻に遺産を残しても、妻死亡後は、妻の親族に財産が全て行ってしまい、夫の親族にはいきません。しかし、民事信託では、妻に財産を承継させても、妻死亡後は夫の親族に財産を承継させることが可能となります。
財産を、夫の親族に信託譲渡し、第一次受益者を夫とし、夫死亡後は第二次受益者を妻とし、妻死亡後は信託が終了し、夫の親族が財産を承継するというスキームを組めば、財産が夫→妻→夫の親族と流れます。
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<問題点>
1.受託者の使い込み等を抑える効果的手段がない。
民事信託の最大の弱点は、受託者の権限乱用を抑える手段が限定的だということです。
商事信託の場合は、監督官庁による監査も含めて、何重にも不正防止の手段がとられています。成年後見制度でも、国による監督が行われます。ところが民事信託は、あくまでも、受益者と委託者が受託者を監督するという建前です。しかし、高齢者の財産保護、親なき後問題、受益者連続信託、いずれもそのような監督は期待できません。
2.受託者にふさわしい人材が確保するのが難しい。
民事信託の成否は、99%受託者の選任にかかっていますが、現実には適任者を確保することは困難です。受託者が欠けた場合に備えて、2名以上適任者を確保することが理想ですが、複数名の確保は至難の業です。弁護士が受託者になることは、信託法上、できません。
3.受託者の義務が重すぎる。
民事信託では、資産運用・経理処理等、受託者にかなりの負担がかかります。受託者にも家族があり仕事があり、いつまで、受託者の善意に頼れるかという問題があります。受託者が、これ以上、受託業務を続けられないとなったとき、代わりの受託者を見つけることができるか、という深刻な問題があります。
<弊所での解決策>
民事信託は、上記のような問題点に加え、未解明な問題が多数あります。弊所では、以上のような問題点を踏まえ、効果的で現実的なスキームを提案いたします。
1.事情を十分お聞きし、「弁護士からのスキーム提案書」を提出します。
2.受託者に予め受託者の義務を説明し、軽減する対応策を検討します。
3.受託者の不正防止に可及的な方法を講じます。
その上で、法律・税務の両面から、効果的なスキームを構築します。
【民事信託制度が乱用されている方へ】
実務では、一部ですが、高齢者の財産保護に名を借りて相続人を囲い込むために民事信託が利用されているという現実があります。そのような場合は、効果的な対応策をとる必要があります。弊所では、個別の事案ごとに対応策を提案いたします。