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森法律事務所から一言

遺言書や被相続人による生前贈与がある場合は、往々にして、相続人の有する遺留分が侵害されている場合があります。

この場合、遺留分を侵害された相続人は、侵害額相当額の金銭請求をできます。

しかし、遺留分侵害額計算では、どこまでを遺留分の対象にできるか、権利者が被相続人から取得した利益はどこまで控除されるか、専門家でも往々にして計算ミスをすることがあります。


弊所は、遺留分侵害に関しては多くの実績があり、多数のノウハウを蓄積しています。
また、下記書籍と動画を弁護士向けに発売し、多くの先生方の業務に役立ててもらっています。特に現時点では、新しい法制度である遺留分侵害額請求に関する著作が少ないことから、多くの先生方の業務に役立ててもらっています。

法律家のための遺言・遺留分実務のポイント 遺留分侵害額請求・遺言者作成・遺言能力・信託の活用・事業継承


弁護士のための遺産相続実務のポイント 遺産分割・遺言無効・使途不明金ほか遺産分割の不随問題


 

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遺留分侵害額請求 Q&A

遺留分とは何ですか?
相続財産について、一定の相続人に一定割合の継承を保証している持ち分利益です。被相続人が贈与や遺贈などで「自由分」の範囲を超えて遺留分の枠にまで踏み込んでしまったときは、遺留分に基づき侵害額の金銭清算を求めることができます(遺留分侵害額請求権)。 遺留分権利者は、配偶者・子及び子の代襲相続人・直系尊属で、兄弟姉妹には遺留分は認められていません。胎児には遺留分があります。
遺留分は、相続人が直系尊属のみの場合は3分の1であり、それ以外は2分の1です(昭和56年1月1日以降)。
遺留分算定の基礎となる財産は相続財産だけですか?
相続財産以外にも、生前贈与を加算します。
相続人以外は、「相続開始前の1年間にされた贈与」と「1年を超えた贈与でも遺留分権利者に損害を加えることを知って行われた贈与」が対象になります。
 相続人は、「10年以内の特別受益」と「1年を超えた贈与でも遺留分権利者に損害を加えることを知って行われた贈与」が対象になります。実務では、この特別受益の認定は、限定的に認定していることもあって、現実の訴訟では、特別受益該当性をめぐって争われます。
遺留分は放棄できますか?
相続前は家裁の許可を得て遺留分を放棄し、相続後は、家裁の許可なしに遺留分を放棄できます。
遺留分を放棄しても、事情の変更があれば、家裁の許可の取り消しまたは変更を求めることもできます(家事事件手続法78条1項)が、滅多なことでは、放棄の撤回はできません。
資金の贈与を受けて見返りに遺留分を放棄した場合、後日、その資金贈与が遺留分を侵害するとして取り消された場合、全額が算定基礎財産に組み込まれてしまうことがあります。
遺留分を放棄すると相続人の資格を失いますか?
失いません。
遺留分の放棄は、相続の放棄ではないので、相続開始後も、相続放棄をしない限り、相続人の地位を失いません。 
遺留分侵害額請求の意思表示は、どうすれば良いのですか?
遺留分侵害額請求の意思表示は、遺留分侵害額請求権を発生させる形成権行使としての意思表示と、発生した侵害額請求債権の履行を求める意思表示の二つがありますが、一つの意思表示で兼ねることができます。
意思表示の方法は、配達証明付内容証明郵便で行います。受領拒否される場合に備えて特定記録も同時に送付します。メール、普通郵便は、送達の証拠とは認定しない判例があります。
遺留分侵害額請求の意思表示は、いつまでに行使しなければなりませんか?
知ってから1年、相続のときから10年です。
遺留分侵害額請求の意思表示は、知ってから1年、相続のときから10年以内に行使する必要があります。
意思表示すれば足り、その期間内に訴訟や調停を提起する必要はありません。しかし、発生した債権は、原則として、5年で消滅時効にかかります。
「知ってから1年」というのは、遺贈や贈与が行われたことを知っただけでなく、それが、遺留分を侵害する可能性があることまで未必的に認識していたことが必要です。
また、意図的に遺言を隠し、10年経過してから遺言書の存在を明らかにしたときなど、 遺留分の消滅を主張しても権利濫用になる場合もあるといわれていますが、現時点で、これを認めた判例は存在しません。
遺言、死因贈与、生前贈与がある場合、遺留分侵害額請求権を行使するのは、どの順番ですか?
できるだけ相続に近い贈与等を対象にすることで社会秩序の安定を図るという観点から、遺贈→死因贈与→生前贈与(特別受益)の順で侵害額請求をします。生前贈与の間では、より新しい生前贈与から順次遡ります。これらは強行法規であり、遺言で変更できません。
同順位の間では、利益の額に応じて割り振りますが、この点は遺言で変更できます。
いずれの場合も、遺留分侵害額請求権者に選択権はありません。受贈者・受遺者が無資力の場合は、遺留分侵害額請求権者がそのリスクを負担します。
遺留分侵害額の計算方法はどうしますか?
1.まず遺留分権利者の遺留分額を算出します。
[遺留分算定の基礎となる財産額](相続人が相続時に有していた財産の総額+特別受益・贈与財産の価格-相続債務の全額)×[個別的遺留分](総体的遺留分割合×法定相続分)=遺留分額
2.ついで遺留分額から、遺留分権利者が得た利益を差し引きます。
[遺留分額]-(遺留分権利者が相続によって得た財産-負担相続債務額)-特別受益額=遺留分侵害額
3.寄与分は、遺留分侵害額計算では、請求する立場でも請求される立場でも、一切、考慮されません。
4.不動産等は、相続時の時価で評価します。受贈時でも、現在時点でもありません。
遺留分侵害額請求をされる立場からは、どのような権利がありますか?
以下の3つがあります。
1.裁判所に、遺留分侵害額請求権行使により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与の申立てをすることができます(民法1047条5項)。
2.受遺者・受贈者が、遺留分侵害額請求権者が負担すべき債務を消滅させた場合、その限度において、遺留分侵害額請求債務を消滅させる意思表示ができます(民法1047条3項)。
3.遺留分侵害額請求債務者からの弁済すべき額の確定を求める訴えが提起できます。